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心理療法システム編
第11巻 処方箋折衷療法
Prescriptive Eclectic Psychotherapy
ジョン・ノークロス博士
John C. Norcross, PhD

監修:S・マーフィ重松(東京大学助教授) 監修・翻訳:岩壁 茂(お茶の水女子大学助教授)
■VHS ■日本語字幕スーパー ■収録時間:48分 ■解説書付

■商品コード:VA-2011 ■¥48,600(税込)
ノークロス博士は、現在アメリカの心理療法家の6割以上が、一つの理論学派に固執せず、複数の理論よりクライエントに最も適した介入法を選択する折衷派アプローチを採ることが近年の調査により明らかにされている。これは、クライエント一人一人のニーズに的確に対応し、より高い治療効果を得ようとする心理療法家の姿勢の現れである。折衷派アプローチの第一人者であるノークロス博士によって、実演される処方箋折衷派アプローチの「処方箋」とは、クライエントのニーズに合わせて、様々な理論モデルから最もそのクライエントに適した介入法を選択することを意味する。処方箋折衷アプローチのもう一つの特徴は、気付きと行動の双方を促進し、その間に相補関係を作ることにある。つまり、クライエントの問題に対する気付きを高めることにより、より具体的な行動計画が見えるようになり、実際に問題に働きかける行動を起こすことにより、問題に対するより深い洞察が得られるという循環が起こる。本セッションにもこのような相補関係を促進する介入方針がクライエントのニーズに即した形で実践されているのがわかる。


ジョン・ノークロス博士
(スクラントン大学心理学部教授)
ジョン・C・ノークロス博士について

ジョン・C・ノークロス博士には、ロード・アイランド大学より臨床心理学の博士号を取得し、ブラウン大学医学校でインターンとして勤務した後、現在、スクラントン大学の教授としてこれまでに心理学部長も務めている。そのかたわらに個人開業も営み、心理療法理論統合や処方箋折衷療法の権威でもある。これまで100以上の学術論文を執筆、10冊の編著作があり、彼の著作には、「心理療法の諸体系:理論比較分析の試み(Systems of Psychotherapy : A Transtheoretical Analysis. J. O. Procheskaとの共著)」「臨床心理学専攻大学院の内部情報源(Insider’s Guide to Graduate Programs in Clinical Psychology, MayneとSayetteとの共著)」がある。



処方箋折衷療法の概略

この心理療法では、一人一人の患者の必要に応じて心理治療法と治療関係を調整する。これは、異なる学派の治療理論より有効な介入法を抜き出し(折衷派)、実証的な支持に基づいて作られた指針をもとに、それらの介入法を個々の事例と組み合わせること(処方箋式)によって達成される。処方による組み合わせの結果、クライエントとセラピストの両者に適合した治療法が可能となり、治療の効率及び効果を高める。

処方箋折衷派の主要な特徴は、気付きと行動の相互作用による相乗効果を高めること、異なる心理療法理論を相補的に組み合わせること、介入法を選択するときの指標となる実証データを同定することの3点である。気付きと行動は、相互を促進しあう関係にある。気付きは、具体的な行動の裏付けを与え、その火付け役となる。行動は、有用な洞察を推進し、深める。よって、ほとんどの患者に対して、気付きを志向する介入法と行動を志向する介入法の両方が与えられるのが望ましい。それに呼応し、表面的に大きく異なる心理療法の理論は、互いに矛盾するのではなく相補的であると見なすことにより、差異を障害としてではなく、歓迎されるべき多様性としてとらえることができる。実証的な支持を受ける心理療法は、折衷派セラピストの介入法のレパートリーの中でそれぞれ異なる重要な位置をもつ。そしてその位置付けは、処方基準によって定められる。

処方ガイドライン(基準)は、統制条件において行われた治療結果の実証研究と臨床的な判断に基礎をおく。これは、理論的な偏向や制度的慣習による介入法選択と対比されるもので、治療関係のスタンスも処方ガイドラインによって選択される。心理療法の形態を決定するのに考慮される処方ガイドラインには、精神障害の種類、治療目標、動機付けの水準、変容段階、変容水準などがある。また治療関係のスタンスを設定するために考慮されるガイドラインは、患者の期待、抵抗水準、変容段階、受託/社会親和型取り入れ/自律型の次元である。

処方箋折衷療法は、歴史的に見て心理療法の発展を妨害してきた「教条の対立」する環境を超越し、それらを統合する枠組みを与え、治療行為を個々のクライエントに適合するように調節することを目的とする。よって、諸学派の理論と同列にある「もう一つ」の心理療法理論ではなく、治療者が臨床的研究と臨床的叡智(特に、Beutler, Lazarus, ProcheskaとDiClementeらの試みに見られるように)を統合させるための、開かれたシステムとしての性質が大きい。このアプローチは、無比の個人とその個人を取り巻く環境に合うように心理療法を調整する点において、適応度が高く、創造的である一方で、系統性を保ち、実証的データに支えられているといえる。



クライエントの素性

■サム
■年齢:32歳
■性別:男性
■人種:白人
■婚姻関係:3年前に離婚(4年間の婚姻生活のあと)
■職業:音響(スタジオ)技師
■教育歴:修士課程修了
■両親:12歳の時、両親が交通事故で死去、母方の叔父と叔母に育てられる
■兄弟姉妹:妹一人、サムが兄弟とみなす従兄弟が3人



関連する出来事

サムは、ラジオ局で音響関係の技師として働いている。2週間前のことであるが、朝7時に、その日の朝8時に放送される予定のテープにボイスオーバーの修正をすることになっていた。

この仕事の前の晩、サムは帰路にある近所のバーで仕事帰りに何杯かの酒を飲んだ。9ヶ月前から同棲しているジャニスが出張で留守にしていたのでので、彼はバーの帰りがけにサンドイッチでも買い、それを食べて寝ようと思っていた。

バーは活気に溢れていた。2杯飲んでそろそろ帰ろうとしていると、サムの友人のデーブがバーに入ってきた。彼は、デーブとそれまで一緒に話していた女性、ルーシーと自分にもう一杯ずつ酒を頼んだ。仕事のこと、うわさ話、など一時間ほどおしゃべりしたあとデーブが、数ブロックしか離れていない自分の家まで行き、そこでコカインを吸おうと提案した。この時点で彼はかなり気分が良くなっていたので、「まあ、いいじゃないか」と思い、サム、デーブ、ルーシーの3人はデーブの家に向かった。到着したあとまた少し酒を飲んで音楽を聞き、3人で2分の1グラムのコカインを分けた。この時すでに深夜1時半を回っていたが、すっかり気分が「盛り上がって」いた彼はルーシーにアパートに一緒に来るように誘い、彼女はOKを出した。デーブが戻ったあと、二人はもう一杯強い酒を飲んでからそこを後にした。

朝の7時10分にサムの電話が鳴ったのだが、彼は疲れ果てて、ルーシーと二人でリビングのソファーに寝ていた。洋服は散らかり、音楽が鳴り響いていた。彼は吐き気がした。頭はがんがんした。電話はラジオ局からであり、サムが『一体どこにいるのか』わからず電話してきたのだった。彼はルーシーに彼女の持ち物をまとめて帰るように告げ、重い足をひきずってなんとかシャワーに入って洋服を着ると、タクシーを拾いラジオ局に行った。ラジオ局のスタジオに到着したときはすでに8時45分で、予定した放送枠を逃してしまった。ボイスオーバーの仕事をしたタレントのギャラは、放送されなかったことに関わらず、支払わなければならなかったし、プロデューサーはカンカンだった。彼にとっては「修羅場」だったのだが、怒鳴られながらも頭の隅では、ジャニスが帰宅する予定の3時半までに、ルーシーが忘れ物なく帰ってくれたことを願っていた。

サムは「なんてばかなことをしたんだ。大切な時間帯にヘマをやった。なんであんなになるまで飲んだんだ」と自問した。2、3杯やることはよくあったが、あれは水曜日なのに浴びるように飲む「週末の飲み方」だった。なんで平日にコカインを吸ったのか?ルーシーとのつかの間の一時を楽しむのは良かったが、もしジャニスが早く帰ってきて「見つかった」らどうなっていただろうか?もしジャニスが帰宅したときに、ルーシーがアパートにいた形跡があったらどうしよう?そう思うとサムはみじめだった。そして、生まれてはじめて自分の人生がどうなるのか心配になった。

また3ヶ月前、サムは顧客とスタジオで一日仕事をしたあとに、一緒に出かけた。その顧客のホテルの部屋へ行き、1グラムのコカインを吸い、かなりの量のスコッチを飲んだ。彼は結局ホテルの部屋に一晩泊まってしまい、次の日はそのまま寝ずに出勤、コーヒーとたばこでなんとか一日の仕事を乗り越えた。その日に何をして何を言ったのかさえあまり覚えていなかった。結局その顧客が次の仕事を他のラジオ局にもっていったと知ったとき、彼は自分が社会的にも職業的にも自殺的行為を犯しているのだろうかとふと考えた。

離婚間近のころ、サムは妻との喧嘩が絶えず、かなりの量を飲むようになっていた。時折他の女性と「性的関係」をもったが、2、3度の性的交渉以上に関係が続くことはなかった。彼にとっては女性は大して重要ではなかったのだ。自分の妻、自分の人生、全てのことに退屈していた。妻との決定的な別れが訪れたのは、彼と3ヶ月に渡り浮気をしていた同僚の女性が彼の妻に電話をし、自分との浮気のことだけでなく彼が他の同僚の女性とも関係を持っていたと伝えた直後であった。妻はもう沢山だと伝え、それきり彼の元に戻らなかった。彼は落ち込んだが、そうするのが一番いいだろう、そうすれば平穏な生活が戻るだろう、妻が去れば、もうこんなに酒を飲まなくても済むだろうと考えた。



これまでの面接の経緯

第1回面接


臨床歴に関する情報を集め、ラポールを確立し、サムが1ヶ月間ドラッグと酒を断つことを約束する。



第1回面接と第2回面接のあいだ

サムは、個人史に関する質問紙に答え、MMPT-Uのコンピュータ版を受ける。



第2回面接

インテークの続きである。個人史に関する質問紙とMMPT-Uの結果を一緒に見直した。第2回面接の終了までに分かったのは、サムの扱いたい問題が、うつ傾向、退屈を感じていること、不貞を働いたこと、ゆっくりと自己破壊的行動へ落ちつつあるということであった(これらは、処方箋折衷法セラピーの行動段階に当たる)。彼はドラッグと飲酒が重大な問題であるとは納得していないようであり、(否認ではないが、最小化が見られる、処方箋折衷法セラピーの熟考段階にある)、アルコール依存者匿名協会(AA : Alcohol Anonymous)、または理性による回復(Rational Recovery)というグループへの参加の勧めを「少なくとも当面は」と断ったが、1ヶ月間、酒とドラッグを断つことは約束した(全部で2ヶ月間)。これは、アルコールとコカインが彼の気分に影響しているか調べるためである。そして二人は1週間に1度の回数で、個人療法を続けることの契約を結んだ。この個人療法は、支持的療法と表現療法、そして認知行動療法の要素を組み合わせたもので、二人で作る宿題も含まれる。



第2回面接と第3回面接のあいだ

二人が合意した課題は、医師による包括的な検査を受け、酒とコカインをやらず、現在の自分がもつ問題と父親の問題との類似点について考えることである。



第3回面接

ビデオに収録



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